空間の中心にあるもの
Solitaryの入口を跨いだ瞬間、真正面に現れる大きなテーブル。

当店にお越しいただいた方の多くがこのテーブルに自然と視線が吸い寄せられている様に思います。
長さはおよそ4メートル。
一枚板を二枚繋ぎ合わせたものです。
ただそこにあるだけで十分な迫力があるのですが、大きさだけが魅力ではありません。
この天板はSolitaryの内装設計と工事を手掛けてくださった橋本建築造園さんの事務所に保管されていたもので、その事務所が建つ場所は、今からおよそ100年ほど前、縫製工場として使われていた建物の跡地だったそうです。
この板は、当時そこで作業台として使われていたものだと伺いました。
表面には直線的な傷や、小さな穴がいくつも残っています。
洋服を作り上げるための生地の裁断や生地を固定する際にできた作業の痕跡ではないかとのこと。



長い年月の間、服作りの現場を支えていたのです。
その天板を服を扱うSolitaryで使わせていただいているということに強い縁のようなものを感じています。
そして、その天板を支えているのが、滝ヶ原石の間知石(けんちいし)です。

滝ヶ原石の採石地である滝ヶ原は、石川県小松市の自然豊かな山合いにある小さな町。
古くから良質な石が採れることで栄え、「石の里」とも呼ばれています。
その地で100年以上の歴史を持ち、現在では唯一の石材店である石材荒谷商店さんの石切場から切り出されたものです。
間知石(けんちいし)とは、採石の際に傷や筋が入り、石材としての価値が失われてしまった石を加工したもので、主に神社や城の石垣などに用いられています。
この間知石は、現当主の祖父である先代が、まだ機械のない時代にツルハシを使い、全て手作業で削り出したものです。
表面に刻まれた無数のツル目は、手仕事の軌跡そのもの。



これだけ手間をかけて生み出された石が、長い間石切場に眠っていたそうです。
手仕事によって削り出された石が、かつて手仕事を支えていた天板を支える。
異なる場所で、それぞれの役割を担ってきたものが一つとなり、Solitaryの中心に佇んでいるのです。
以前のブログでも綴ったのですが、Solitaryでは、手仕事の跡が残るもの、一見すると癖があるもの、わかりやすさとは別の部分に魅力があるものを大切にしています。
このテーブルは単なる什器ではなく、Solitaryのシンボルの一つとして、その考え方を静かに体現している存在です。
お越しの際には、天板の傷や石の表情にも目を向けてみてください。
そこに刻まれた時間もまた、この場所の一部です。
執筆者 中村鴻大


