「綺麗すぎる」から「ちょうどいい」に。
Sans Limiteの定番であるブロードボックスレギュラーカラーシャツ。
ブロードの滑らかで上品な生地に、ケンボロ仕様の袖、丁寧に巻き伏せ本縫いで仕上げた脇線など、一見するとクラシックなドレスシャツを思わせる佇まいです。
今回は、実際に着用し、洗濯を繰り返したシャツを通して、その経年変化を部位ごとにご紹介いたします。
着用と洗いを重ねることで生まれたパッカリングやシワ感、柔らかな印象になった生地の表情の変化を感じていただけたらと思います。
まずは新品のシャツをご覧ください。
・ブロードボックスレギュラーカラーシャツ(新品)

ブロード生地らしいハリと光沢感があり、仕立てもいいことから「綺麗なシャツ」や「ドレスシャツ」といった印象。
「普段着るには綺麗すぎる」なんて思う方も多いのではないでしょうか。
では、約2年ほど着用した同モデルのシャツをご覧ください。
・着用品

パリッとしたハリが抑えられ、柔らかな雰囲気を纏った小慣れた印象に。
全体の変化をご覧いただいたところで、ここからは部位ごとの変化をご紹介していきます。
まずは襟元から。新品の襟にはピンとしたハリがあり、シャープな襟先のラインがスッと伸びたドレスシャツの様にも見える顔立ちです。
・襟 手前(新品)奥(着用品)
着用品では襟先、台襟にパッカリングとシワが刻まれ柔らかな顔立ちに。
前立てや胸ポケットのピンとした直線的なラインには、ステッチに沿ってパッカリングが浮かび上がり、柔らかな陰影が現れています。
・前立て(新品)
・前立て(着用品)
・胸ポケット(新品)
・胸ポケット(着用品)
脇線の巻き伏せ部分は、新品時にはフラットで滑らかな印象ですが、着用品ではステッチに沿って小さなパッカリングがポコポコと浮かび上がっています。
・脇線 左(新品)右(着用品)
裾のステッチには既に若干のパッカリングが現れていますが、着用品ではよりくっきりと刻まれ生地をうねらせています。
・裾 手前(新品)奥(着用品)
ヨークや袖ぐりに現れたパッカリング。光の当たり方や角度によってはギャザーにも見えるような細かな陰影を生み出しています。
・ヨーク 手前(着用品)奥(新品)
・袖ぐり(新品)
・袖ぐり(着用品)
そして、Sans limiteのシャツ特有の袖のパターンにもパッカリングがびっしりと現れています。
こちらも脇線と同じような小さなパッカリングがポコポコと袖先まで続いており、特徴的なパターンにさらなるアクセントをもたらしています。
・袖 上(着用品)下(新品)
カフスやケンボロなど、縫製箇所が密集した袖先は経年変化の見どころ。
・袖口 上(着用品)下(新品)
大きさが異なるパッカリングやシワ感が顕著に現れ、立体的な陰影が目を惹きます。
生地も柔らかくなり、手元に馴染むような柔らかな風合いに。
着用と洗いを重ねることで生地全体にシボ感が生まれ、微細な毛羽が立ち、優しい肌触りに。ブロード特有のツルッとした光沢感は適度に残した肌馴染みのいい生地に変化し、新品時の「綺麗すぎる」と思われる印象から程よく抜け感のある風合いを帯びています。
・生地(新品)
・生地(着用品)
実際に店頭でも、こちらの着用サンプルをお見せしたお客様からは
「それ、同じシャツですか?」
と驚かれることもしばしば。
中には
「新品よりこっちが欲しい」
という声もありました笑
このヤレ感が普段着るにはちょうどいいのだと思います。
Sans limiteのブロードボックスレギュラーシャツはアイロンをかけてピシッと着ても、洗いざらしでラフに羽織っても様になる作品です。
定番が故に後回しにしがちな「シンプルな白シャツ」。しかし、こちらのシャツは袖を通すたびに「定番」という言葉の強さを感じさせてくれます。
ワードローブの中に一つあるだけで、コーディネートの主役にも脇役にもなれる存在です。
一度袖を通してみてください。
執筆者 中村鴻大
