見た目ほど難しくないんです
YUTA MATSUOKAのパンツの中でも、個人的に好きなモデルのひとつであるHook Pants。
裾に備えられたフックによってシルエットを自在に変えられるこちらの作品は、その日の気分や合わせる服によって見え方を変えられる自由度の高さデザインが魅力です。
フロントにタック、膝裏にはダーツを入れた立体的で程よいゆとりのあるシルエット。裾のフックを留めれば膝下の極端にテーパードがかかり、シャープな輪郭へと姿を変えます。
今シーズンも非常に個性的な生地を載せて展開されたHook Pants。
・Slub Yarn Dobby Hook Pants/スラブヤーンドビーホックパンツ(CHARCOAL)



ネイビーのコットンリネン糸とグレーのスラブコットン糸を用いてドビー織機で織り上げられたオリジナル生地は、離れて見てもわかるほどのボコボコとした凹凸や節が複雑に入り混じり、豊かな表情を持っています。
チャコールと言いつつも見た目の印象はナス紺のような感じです。

こうして改めて特徴を書き出してみると、少し難しそうなパンツに感じるかもしれません。
シルエットを変えられるギミックがあり、生地にも強い個性がある。
それだけを見ると合わせる服を選びそうな印象を受けますが、実際に着てみるとその印象は良い意味で裏切られます。
シンプルな服とも相性が良いですし、個性のある服と合わせても自然に馴染む。その懐の深さこそが、このパンツの魅力だと思っています。
今回は同じスタンドカラーでも全く表情が異なる2つのシャツで合わせてみました。
まずはSans limiteのボックススタンド2本針シャツ。
・シャツはサイズ1、パンツはサイズ3を着用(169cm77kg)



程よくゆとりのあるボックスシルエットに定番のコットンブロード生地を採用し、2本針ステッチを走らせたスタンドカラーシャツです。
白シャツらしい清潔感がありながらも、ポコポコと浮かび上がるパッカリングや、洗いざらしによる柔らかな風合いが加わることで、カジュアルで着やすい雰囲気に仕上がっています。
このシャツを合わせると、パンツの存在感がより際立って見えます。
白いブロード生地の持つさっぱりとした印象によって、生地の表情やシルエットの変化が素直に伝わり、パンツそのものの魅力を楽しめるスタイリングです。


次は、灰草のCoal Miner Shirt(dust)と合わせてみました。
・シャツはサイズ4を着用



こちらはシルクネップ糸とリネン糸で織り上げた綾織生地を使用しています。
シルクの柔らかさとリネンのハリが重なることで、滑らかなドレープ感を持ちながらも長年着込んだ古布のような風合いを生み出しています。

dustという色も非常に独特で、パッとみた感じはグレーのようにも見えますが、くすみやムラ感のある不思議な色味です。
切りっぱなしで処理された襟元や裾、ヨークから揺らぐ糸も相まって、どこか粗野で静かな雰囲気を纏っています。

こうした個性の強いシャツと合わせても、このHook Pantsは不思議と違和感なく馴染みます。
Sans limiteと合わせた時にはパンツが主役として映り、灰草と合わせた時には素材同士の奥行きが重なり合う。
それぞれ全く異なる見え方になりますが、どちらも自然に成立しているところにこのパンツの面白さがあります。
個人的にこのモデルが好きなのは、ギミックや生地の面白さだけではありません。
一目で印象に残る個性を持ちながらも、その個性によって着こなしが制限されることがない。合わせる服によって様々な表情を見せてくれる柔軟さがあり、それでいて軸となる存在感は失わないところに惹かれています。
靴を変えたり、アウターを羽織れば、また新しい顔を見せてくれるでしょう。
確かに個性的ではありますが、足を通してみればその魅力に気付いてもらえると思います。
執筆者 中村鴻大


