Sans limiteに圧倒された日
昔から、ベーシックな服や定番と呼ばれるものに心惹かれてきました。
決して派手ではないけれど、迷ったときに「とりあえず、これ」と選べる安心感。そんな服が好きで昔から探し回っていました。
Sans limiteのシャツを初めて知ったとき「これだ。」と思いました。
漠然とシャツを探している時に偶然覗いたオンラインショップで見かけたレギュラーカラーシャツ。
カジュアルシャツらしからぬ上品な雰囲気に心打たれ、いつか欲しいと思っていました。
それから数年が経ち、ありがたいことにSaltyオーナーより新店舗Solitaryのスタッフ募集のお話をいただきSans limiteのお取り扱いができることを知りました。勤め始めて間もなく、念願だったSans limiteの展示会へ足を運ぶ機会がやってきました。
観光客で賑わうアメ横通りにあるビルの2階、Sans limite上野店の一角が展示会場。独特の静けさと緊張感のある空間に、やや身構えながら入ったのをよく覚えています。
展示会場へ足を踏み入れると、以前から気になっていた白シャツの他にも、定番チノや同じチノ生地を使用したゴムパンツなど、これまで写真や文章でしか知らなかった作品を初めて実物として手に取ることができ、その瞬間は本当に感動的でした。
展示会が始まり、まずはと思いシャツがずらりと並ぶ中から手に取ったのが定番ボックスレギュラーカラーシャツ。
・こちらは定番のブロードボックスレギュラーカラーシャツ。
一見すると正統派のドレスシャツのようにも見えるクラシカルなデザインですが、身幅や袖などにゆとりを持たせており、リラックス感のあるモダンなフィッティングに。
細部へ目を落とすと2枚袖のパターンや緻密で細やかな運針、脇線は3mm幅の巻き伏せ本縫いにするなど、カジュアルシャツらしからぬ仕立ての良さに圧倒されました。


定番と言えば忘れてはいけないのが2本針シャツと3本針シャツです。展示会場の色で分けられていたシャツの中から圧倒的な存在感を放っていました。
・こちらは2本針シャツ

脇線や袖、袖ぐりには2本針のステッチにより、ボコボコと激しい凹凸感のあるパッカリングが生まれ歪なシルエットに。
3本針ではチェーンステッチが採用されており、グニョグニョとうねる様に走った肩周りや脇には2本針とは全く異なる歪さが生まれています。
・こちらは3本針シャツの肩周り
圧倒的な作品の数々を前に「あれも良い、これも気になる」と頭の中がパニック状態に。そんな中、デザイナーの門田さん、スタッフの津雲さんから声をかけられ多くの質問をいただきました。
「以前はどんなお店で働かれていたんですか?」
「どんなブランドを扱っていました?」
「何年くらい続けていたんですか?」
怒涛の質問攻めに最初は少し驚きましたが、25AWの展示会の時から新店舗に立つ人はどんな人なのか、実際に会って話したいとおっしゃっていたこともあり、こちらに聞きたいことや知りたいことがたくさんあったのだと思います。
こちらもお聞きしたいことが沢山あったのですが、門田さんと直接お話しできたことへの緊張と、気になるものが多過ぎて頭の中がパニックになるほどの魅力的な空間に圧倒されてしまったので次の展示会では逆に質問攻めにしたいと思っています…。
Sans limiteは2012年にスタートしたシャツを中心としたブランド。
デザイナーの門田さんはCOMME des GARÇONS SHIRTで15年にわたりパターン、企画、生産管理など服作りの全てに携わり、その経験を活かしてブランドを立ち上げられました。
「Sans limite」とはフランス語で「限界なしに」「無制限に」という意味。
Sans limiteの作品は、シャツやチノパンなど、いわゆる“定番”を中心に展開し、市場やトレンドの枠にとらわれず、自由でいて、芯のある服を作り続けることでその名を体現しています。
ユニセックスで着られるサイズ展開ですが、単に体型に合わせるだけではなく、その日の気分や合わせるパンツ、ジャケットによってピッタリあわせてみたり、サイズを上げて肩の力を抜いて着用する自由な着こなしを楽しんでいただけます。
トレンドや目新しさではなく、ミニマルで永続性のある“定番”を求めている方へ強くおすすめしたいブランドです。
執筆者 中村鴻大
