独自の感性が紡ぐ、唯一無二のスタイル
まばらに雨が降る中、静かな通りにある建物の階段をのぼり傘を畳んでいるとデザイナーの河村さんが迎えてくださり、会場の中へと案内していただきました。
中へ入ると部屋の中には煌々とした蛍光灯はなく、自然光と柔らかな間接照明が室内を包み込み、穏やかでゆっくりとした時間が流れていました。
簡単な自己紹介を交わした後、作品を見せていただきながら「KLASICA」という名前の由来を尋ねてみました。
元々はお店の屋号として掲げていたもので、服作りを続けていくうちにそのままブランド名として使うようになったそうです。名前には「伝統的」「古典的」といった意味を持つ「Clasico」と「家」を意味する「Ka」を掛け合わせた造語で、頭文字をCではなくKにしたのは単純にインパクトを意識してのことだと教えていただきました。
作品を見ながら試着を進めていくと、パンツひとつを試着する際にも必ずシャツやコート、ジャケットやベストを合わせて着せられ、靴までお貸しいただき全身でコーディネートを提案してくださいました。
この日は河村さんが着用していたものと同じショートパンツとコートを試着する機会もあり、「普段は絶対履かないけどとりあえず履いてみるか。」と思いながら着てみると河村さんがすかさずシャツコートを持ってきて着せてくださいました。
そのコーディネートに心奪われ、気がつけばちゃっかりシャツコートとショートパンツを自分用にオーダーしていました。
単なる服ではなく「スタイル」として見せていただけることで、KLASICAが大切にしている世界観を強く感じられる貴重な経験になりました。
KLASICAの作品は、河村さんが所有する膨大なヴィンテージウェアから着想を得ております。しかし、ただ踏襲するのではなく、生地やディティールを大胆に置き換えたり、オリジナルのデザインを織り交ぜたりすることで河村さん独自の感性が息づいた新たな洋服へと昇華されています。天然素材にこだわり、どこか野趣を帯びた空気感が漂う唯一無二の世界観が魅力的です。
25AWシーズンでもその世界観造りにより、非常に魅力的な作品が展開されております。
入荷してきてすぐに目を奪われたのがこちらのケンプツイード生地のコートです。
過去に織り上げられたケンプツイードを独自の解釈で現代に甦らせた圧倒的な存在感を放つ生地です。ツイードらしい素朴な風合いを残しつつも、糸の番手を下げ日常的に着用しやすい軽さと柔らかさが特徴的です。
切りっぱなしの裾や袖からは茶やオレンジ、白いケンプ糸が揺らぐ様に現れ、豊かな表情を与えています。
・袖口
・袖口と裾
そして、気に入り過ぎてほぼ毎日お店で着用している、こちらのシャツは近江晒しと呼ばれる伝統的な洗い加工が施された生地を使用しています。

生地を灰汁で炊き込み、もみ洗いや天日干しを繰り返し、製品洗いも施すことでシボ感とシワを得た独特の雰囲気を持った生地です。
・生地感
KLASICAの作品は全体的にゆったりとしたリラックス感のあるサイジングでありながら、決してルーズではなく、気負わず着用できる絶妙なバランスが魅力的です。
一度袖を通して「スタイル」を感じていただきたいブランドです。
執筆者 中村鴻大
