続・灰草
先のブログで触れたclassic shirtとは、生地の異なるもの、そして型の異なるシャツがあります。
動画をご覧になった方の中には、画面の中に映っていたシャツが気になった、という方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、先のブログでは触れていなかった、その二つのシャツについて綴っていきます。
一つはclassic shirtのecru。
もう一つは、型の異なるcoal miner shirtの墨です。

まずはclassic shirt(ecru)。

こちらは大麻65%、綿35%の糸を用いた平織り生地を使用しています。

classic shirtのsepiaや墨の生地と比べると、わずかに厚みがあり、弾力を感じられる質感が特徴です。
麻素材特有の凸凹とした節のあるムラもはっきりと現れており、生地そのものの表情を楽しめます。



一見すると素朴ですが、着用を重ねることで生地が少しずつ馴染み、柔らかな表情へと変化していきそうな生地です。
派手さはありませんが、日常の中で着続けることで、じわじわと良さが滲み出てくるタイプのシャツだと思います。
染められていない分、すぐにでも染め直しをすることもできますが、まずはそのまま楽しんでいただきたいです。
続いて、coal miner shirtの墨。

こちらはリネン100%の平織り生地を使用しています。

薄手で軽やかな質感があり、classic shirtの墨ほど強いシワ感ではありませんが、リネンらしい自然なシワと、染めによるムラはしっかりと感じられます。
こちらのシャツで特に印象的なのは、生地端の処理です。
襟、カフス、裾、ヨーク部分は、生地端を折り込まず、そのまま表に出した状態でダブルステッチによって縫い留められています。



着用と洗いを重ねることで、少しずつほつれが増し、糸の揺らぎが現れます。


ここからは、先のブログでは触れていなかった部分になりますが、灰草のシャツの左袖、ケンボロ部分には、別生地が縫い付けられています。

シルク100%の糸を高密度に打ち込んだタイプライター生地。
そこに古いタイプライターを用いて文字を打ち込み、その後ロウ引きが施されています。
着用と洗いを重ねることでシワが入り、ロウが割れ、生地も少しずつほつれ、文字も次第に薄れ、時間とともに風合いが増していきます。
打ち込まれている文字は、聖書や童話から引用されたフレーズをもとにしたもの。

こちらの文字はそのままの引用ではなく、お守りのような意味合いを込めつつ、意味を持たせすぎないよう、デザイナー自身が選んだ言葉を組み合わせています。
必ず左袖に配されている点については定かではありませんが、心臓、つまり「心」に近い側だからなのかもしれない、と想像してしまいます。
ボタン作りや染めもさることながら、こういった細部にまで手が入っている。
どこか一箇所だけが特別なのではなく、全体を通して一切の抜かりがありません。
その作り込みには、素直に圧倒されます。
どういう想いで制作されたのかを知ったうえで袖を通すと、同じ一着でも、感じ方はきっと変わってくる。
そんな体験を味わわせてくれる作品です。
執筆者 中村鴻大


