フィレンツェから届いた、身に着けるアート -Silvana Manetti-
雨が続き、朝晩だけでなく日中にも肌寒さを感じるようになり、Solitaryの周りで少しずつ色づく木々にも、秋の深まりを感じるこの頃。
シャツにジャケットを重ねたり、久しぶりにコートやセーターを出してみたりと、気温の変化に合わせて着られるものが増え、色や素材の組み合わせを考える朝の時間も、一段と楽しくなってきました。
そんな装いに、もう一つ楽しみを加えてくれる作品が、今シーズンより新たにお取り扱いが始まるSILVANA MANETTI(シルヴァナ・マネッティ)より届きました。



2001年、イタリア・フィレンツェに、生地製作の研究所として設立されたSILVANA MANETTI TEXTILE DESIGNER LAB。
テキスタイルデザイナーのシルヴァナ・マネッティが立ち上げ、2007年からは娘のオリヴィアも加わり、素材の研究からデザイン、製作までを自社で手がけてきました。
自身のブランドとして作品を発表する以前から、数々のメゾンの生地企画や独自の技術を用いた製作に携わり、その経験と研究を重ねながら、独特な表情を持つストールを制作するブランドです。
初めてSILVANA MANETTIの作品に触れたときの衝撃は忘れられません。
織りでもなければ編みでもなく、繊維が縦横無尽に広がり、独特の色合いや模様を描く生地は、見ただけではどのように製作されているのか理解できませんでした。
表と裏を返し、近くで眺め、光に透かしてみると、繊維が密に重なる部分もあれば、薄く広がる部分もあり、その不均一さまで美しく感じられたのです。
この生地づくりの中心にあるのが、古くからあるフェルトの技法をもとにした、ブランド独自の製法です。素材となる繊維を手作業で広げ、ピザの上に具材を載せるかのように色や質感の異なる繊維の束や塊を手作業で配置しながら幾重にも重ねてゆきます。詳しい工程は門外不出の技術のためわかりませんが、独自に開発した機材でフェルト化させながら圧着することで、手作業による配置や重なりが模様や凹凸となって一枚の生地に表れています。
繊維の種類や色、重ねる量や方向によって生地の厚みも模様も変わり、ウールやカシミア、シルクといった素材が、これまで見てきたものとはまったく違う表情を見せてくれます。柔らかな毛並みや繊維の流れ、色の混ざり方に感じられる、手仕事ならではの揺らぎ。その不均一さが、素材の良さをいっそう魅力的に見せているように思います。
広げて眺めたくなるほどの表情がありながら、身に着けると服との組み合わせまで楽しくなる。素材への深い探究と手仕事から生まれる独自の世界観には、流行に左右されない、確かな価値を感じます。


今回届いたのは、どれも甲乙つけ難いほど自分でも欲しい作品ばかり。その中から一部をご紹介してゆきます。
まずはこちらから。
・Wool Silk Stole "LIGHT 200"(BLACKBOARD/EARTH)



・Wool Silk Stole ”LIGHT 200"(BEIGE/BLACK)



流れるような線やムラのある色合いが生み出す大理石のような模様が印象的な”LIGHT 200”。
重厚で迫力のある見た目に反してふっくらとした柔らかな質感が非常に心地良い生地です。
片面には繊維が不規則に広がり、もう片面にはボーダーのように並んでいます。大胆な模様を見せるか、横に流れる線を見せるか。どちらの表情も捨て難く、この両面の違いが面白い。


光を受けると繊維の重なりによる模様やボコボコとした陰影が浮かび上がり、豊かな表情が浮かび上がってきます。
続いてこちら。
・Wool Silk Stole "Painting 300" (BLACK/WHITE)



・Wool Silk Stole "Painting 300" (GREY MELANGE/WHITE)



使用している素材だけで見れば”LIGHT 200"と同じウールとシルクなのですが、こちらの作品では、片面はウールを主体としたふっくらと柔らかな風合いに仕上げ、もう片面はシルクを主体に表面にハンドペイントを施しています。
刷毛で塗ったような擦れや濃淡がシルク繊維に不規則に重なっており、滑らかな質感の中に塗料の乾いたタッチが混ざり、見た目だけでなく肌触りまで楽しい生地です。

ウールの面は単色ですが、繊維の密度が薄い部分からもう一色が僅かに覗き、こちらも表情豊か。
気分やその日の装いに合わせて雰囲気をガラリと変えられる気の利いたデザインが魅力です。

最後はこちら。
ひと目見て「どうなってんの?」と思わず呟いた”PUCCINI”
・Wool Stole "PUCCINI" (LIGHTGRAY-BEIGE)



ぐにゃりと歪んだ黒い格子が印象的な作品です。こちらの生地は、手動のシャトル織機で目を粗く織り上げたメッシュ生地を柔らかなフェルト生地と重ねて一枚の生地に仕上げています。
イタリアの芸術家Alberto Burri(アルベルト・ブッリ)の作品から着想を得たという柄は、線の入り組みも不規則で、格子状に組織されているとは思えないほど激しくうねり、思わず目を奪われてしまう圧倒的な迫力があります。


面を返すと淡い色と柔らかな毛並みが広がる落ち着きのある雰囲気。しかしよく見ると色が淡く、繊維の密度が薄い部分には格子模様が透けてちらりと顔を覗かせています。
そして今シーズン入荷した作品の中では唯一の細長い形で長めのフリンジがついたモデルです。柄の出方を気にせず、ざっくり巻いてフリンジを靡かせるのが良さそう。

上質な素材を使い、手仕事を重ねて作られた生地に、これほど自由な表現があること。素材ごとに異なる風合いも、その独創性やアート性の一部となっていて、どんな服に合わせて巻こうかと想像が膨らむ作品はまだまだあります。
時間と手間のかかる作り込みを思うと、本当にこれで良いのだろうかと思うほどの価格設定も嬉しいところです。
織りでもなく編みでもない、唯一無二な作品を、是非お手に取ってじっくりご覧いただければと思います。
※Silvana Manettiの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


