図面を着る?
洋服の柄を眺めながら、建物の間取りを想像する。
そんな楽しみ方をしたのは、YUTA MATSUOKAのこの生地が初めてかもしれません。
不規則に並ぶ線は、初見では抽象的なイメージを表現したものなのかと思っていましたが、もとになっているのは19世紀のフランスのアパートの設計図面でした。
向きや間取りを組み替えて再構築した図案を、プリントではなくジャカード織で表現するという、非常にユニークでYUTA MATSUOKAらしいアプローチから生まれたデザインです。
・Site Plan Jaquard Long Cock Jacket/サイトプランジャカードロングコックジャケット(DARK BROWN)


コットン、ウール、リネンを織り交ぜた生地には、途切れたり交差しながら、不規則に並ぶ直線的な柄が広がっています。
昨年の秋冬にはプリントで表現されていた図案ですが、今季はジャカード織りに。線や形に合わせて織り組織を変え、さらにワッシャー加工を施し緯糸が縮むことで縦方向の線が浮き上がり、不均一な凹凸を生み出しています。



紙の上に描かれていた線を、生地にする。図面をそのまま写すのではなく、織物だからこそできる表現へと発展させているところに、YUTA MATSUOKAのものづくりへの熱量を感じます。
設計図面と聞いてから眺めると、いくつも並んだ線が壁や部屋の輪郭のようにも見えてきます。
どこまでがひとつの部屋なのか、どんな間取りだったのか。つい柄を目で追ってしまう生地です。
こちらのロングジャケットは、前合わせにもひと工夫。首元から胸元まではダブルブレストのように深く重なり、裾へ向かうにつれてシングルの合わせへと変化していきます。
上と下で前身頃の重なり方が変わることで、ボタンを留めた姿にも独特な表情が生まれます。

・サイズ2着用(169cm 77kg)


肩や胸周りは比較的コンパクトで、裾へ向かって緩やかに広がるAライン。
ヒップをしっかり覆う長さがあるので、ジャケットという名前ですが、ハーフコートのように羽織るのもいいですね。
胸ポケットも、表地に切り込みを入れ、袋布とフラップを縫い付けた独特な仕立てです。
フラップを中に収めると、切りっぱなしの生地の端が覗く。前合わせの大胆な作りだけでなく、こうした小さな部分にも手をかけているところに惹かれます。

合わせたパンツは、同じ生地を使用した今季の新型。
・Site Plan Jaquard Curved Yoke Pants/サイトプランジャカードカーブドヨークパンツ(DARK BROWN)


背面のヨークが脇を回り込み、そのまま前のポケットの内側まで続く構造で、サイドには縫い目がありません。


この形を実現するために、パターンを起こすのには随分と苦労されたとか...。
腰周りには2タックを入れ、腿から裾にかけてたっぷりとゆとりを持たせたワイドシルエット。剥き出しのフロントボタンやポケットのリベットには、ワークウェアのような雰囲気も。
ヒップポケットの上には、さらにもうひとつポケットが重ねられ、膝裏にはクロスモチーフをダーツで表現しており、さりげないアクセントになっています。

どちらも個性的なデザインですが、落ち着いたダークブラウンなので、それぞれ単体でも使い回しが効きそうです。
ジャケットは普段のパンツに羽織って、パンツはシンプルなシャツやニットに合わせるだけでも十分に楽しめます。
ただ、個人的には是非セットアップで着ていただきたい。

上下に広がる図案と凹凸、ジャケットの長い裾から続く、ゆとりのあるパンツのシルエット。
同じ生地を重ねることで、それぞれの形も一層引き立ちます。
生地にも仕立てにも、これだけ手をかけた作品だからこそ、上下揃えて存分に味わっていただきたいと思います。
※YUTA MATSUOKAの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


