夏を迎えたSolitary
梅雨明けが発表され、北陸にもいよいよ本格的な夏が訪れました。とはいえ、気温は今のところ30度前後。日差しには夏らしい力強さがありますが、木陰へ入ると風がすっと抜け、思いのほか心地良く過ごせます。
冬は凛とした静けさ、春は麗らかな景色を味わってきましたが、初めて迎える夏は自然の豊かさをあらためて感じさせてくれました。
春には花々が彩っていた景色も、今では濃淡の異なる深い緑に包まれ、お店の周りを歩くだけでも季節が大きく移り変わったことを実感します。
梅雨の雨をたっぷりと受けた木々は、夏の日差しを浴びながら勢いよく葉を広げ、少し前まで見えていた景色を次々と覆ってゆきます。


自然は少しずつ変化するものだと思っていましたが、昨日より今日、今日より明日、毎日景色が書き換えられていくような力強さを感じます。
お店のすぐ脇から続く森へ足を向けると、蔓が木々へ絡まり、草木は足元を覆い尽くし、辺り一面が深い緑に包まれています。その中には、まだ青い栗や柿の実も顔を覗かせていました。


夏の真ん中にいながら、植物たちはもう秋へ向かう準備を始めています。
季節は切り替わるものではなく、毎日少しずつ進んでいく。そんな時間の流れも、ここでは身近に感じられます。
森が賑やかになるのは、植物だけではありません。
セミの声が響き渡り、トンボが飛び交い、カマキリを見つけて思わず足を止めることも。
暖かくなり活発になった猿の群れや鹿、アナグマなど様々な野生動物たちがお店の脇を横切っていく姿に出会えるのもこの季節と場所ならでは。




耳を澄ませば、ひぐらしの声や春とは違った鳥の美しい鳴き声も聞こえてきます。
この場所に立っていると、人が自然の中で暮らしているというより、自分たちが自然の中へお邪魔しているような感覚になります。
そんな景色を眺めていると、自然と空にも目が向きます。
天気の良い日には、どこまでも青い空に、夏らしく大きく膨らんだ雲がゆっくりと流れていきます。遮るものがほとんどないため、その広さは写真で見る以上に雄大。


そんな空へ、獅子吼高原から飛び立ったパラグライダーが風に乗って舞い上がります。
先日は山頂から次々と翼が飛び立ち、空を見上げるたびに新しいパラグライダーが現れ、気付けば空いっぱいに色とりどりの翼が浮かんでいました。

雲の近くを漂ったり、山の稜線をなぞるように旋回したり、風の流れに身を委ねながら自由に空を進む姿は、この場所の夏を象徴する景色のひとつです。
パラグライダー自体は春や秋にも楽しめますが、夏の日差しや風を全身で受けながら空を飛ぶ爽快感は、この季節ならではなのでしょう。
そして、一日の終わりになると、この場所はもう一度違う表情を見せてくれます。
Solitary周辺には、ビルや電柱、電線など空を遮る人工物がほとんどありません。
山の稜線が黒い影へ沈み、その上を橙色、紫、藍色へと空の色がゆっくりと移り変わっていきます。

朝には生命力あふれる森が迎え、昼にはどこまでも広い夏空が広がり、夕暮れには静かな時間が流れ始める。
同じ場所でありながら、一日の中でこれほど景色の変化が味わえるのもこの場所の魅力です。
写真に収めることはできますが、風の匂いや虫の声、少しずつ涼しくなっていく空気までは写りません。
街の中心からほんの少し足を延ばすだけで、こうした時間を過ごせることは、とても贅沢なことだと感じています。
10月までは毎月第2土曜日に夜までゴンドラが運行されています。山頂から夕暮れを眺めながらゆっくりとマジックアワーを迎えるのも、この季節ならではの楽しみ方です。

洋服をご覧いただくことはもちろんですが、その前後に流れる時間や景色まで含めて、夏のSolitaryを楽しんでいただけたら嬉しく思います。
執筆者 中村鴻大


