手の中で育っていくもの
財布というものは、意識していなくても日常の中で何度も触れるものです。
だからこそ、使い心地の良さや質感の小さな違いが、思いのほか印象に残りますよね。
服や靴に比べ、より素材の表情や変化が現れやすく、直に触れる財布は、革使いそのものがデザインとして目に入るものでもあります。
このPETROSOLAUMの三つ折り財布は、他にはない印象的な革使いが特徴です。
・Mountain Fold Wallet(BLACK)


素材にはPETROSOLAUMが日本の老舗タンナーである「新喜皮革」と共同で開発したコードヴァン層の美しい光沢と、その周囲のバット部分の荒々しい質感が隣り合う希少な部位のみをピット槽鞣しで仕上げたオリジナルのコードヴァンバットを使用しています。
ピット槽鞣しとは、植物タンニン液で満たされた槽に1ヶ月以上もの時間をかけて革を漬け込む伝統的な製法です。
繊維の奥までじっくりタンニンを浸透させることで、「皮」の風合いを損なうことなくしっかりとした丈夫さとコシのある味わい豊かな「革」へと仕上がっています。
キメ細やかな光沢から、徐々に繊維の立ったラフな表情へと移ろう質感の変化がこの革の大きな魅力。
被せの部分には艶やかなコードヴァン層が現れ、中央付近から徐々にバット部分へと移ってゆくデザイン性も感じられる革です。



財布を閉じた際には、そのラフな質感が被せの下からわずかに覗き、さりげないアクセントになっています。


内側には同じく馬尻革であるホースバットを使用しています。
こちらはコードヴァン層よりも上の部位で、傷や皺、血管の跡などがそのまま残る粗野な表情が特徴です。
使い続けるほどに柔らかく馴染み、風合いが深まってゆきます。

お札入れや小銭入れの内側では、その密度の高い繊維質がそのまま現れています。
裏地はあえて貼らず、素材そのものの質感を感じられる仕上がりです。


ひとつの財布の中で、馬尻革の様々な表情が楽しめます。
手に収まりの良い大きさでありながら、マチのある小銭入れ、カードポケットも3箇所。
さらに小銭入れの裏にもスペースがあり、必要なものはしっかりと収まります。

外側にはボタンを見せない設計で、見た目はすっきりとした印象に。
磨き上げられたコバや、内側に刻まれた拇印の刻印など、装飾を抑えた中で素材の存在感が静かに際立っています。


同じ革を使用したHidden Derby Lowと比べても、めちゃくちゃ手に取りやすい価格。
この革の魅力を、日常の中で気軽に楽しんでいただけるという点も、この財布の大きな魅力のひとつです。
日々手にするものだからこそ、靴以上に、革の表情や質感の変化を身近に味わえる存在です。
執筆者 中村鴻大


