枯れた表情に惹かれて
見た目には決して派手さのある生地ではありませんが、展示会の中で個人的に一番惹かれたのがこちらの生地でした。


素材はシルクとウール。この組み合わせだけを聞けば、滑らかな美しい艶のある綺麗で上品な生地をイメージするのではないでしょうか。
しかし、こちらの生地は正反対な印象。シルク糸の紡績過程で生まれる落ち綿を再び紡いだ絹紡紬糸と、48番手のウール強撚双糸で織り上げられており、艶はなく、表面には節やネップによる凹凸が不規則に現れた、粗野な風合いに仕上がっています。
程よく肉感があり、シルク由来の柔らかな落ち感とウールのしなやかなハリが合わさることで、美しいドレープが生まれるのもこの生地の特徴。
寄りで見れば節やネップによる不均一で素朴な表情が目に入り、身に纏うことで落ち感によってドレープが美しく現れる。粗野な風合いと美しい落ち感、その両方を持ち合わせた独特の質感に強く惹かれました。
さらに印象的だったのが、「CACAO NIB」と名付けられた色です。わずかにブラウン味があり、パッと見た感じではチャコールのようにも映ります。黒が長い時間を経て日に焼けて褪せたようにも見える独特の色合いです。
節やネップの浮かぶ粗野な風合いに、枯れたような色が重なることで、古布を思わせる雰囲気に仕上がっています。
今回入荷では、こちらの生地を使ったコート、ジャケット、シャツ、パンツの4型が揃いました。このBlogではその中から、ジャケットとパンツをご紹介していきます。
まずはジャケットから。
・A Blazer In Decadence “CHESS”-SW(CACAO NIB)



広めに取られた肩幅に対して、ウエストにはわずかに絞りを入れた砂時計型のジャケットらしいシルエット。
低めに設定されたゴージラインや丸みを持たせた上襟、横から見ると前身頃がやや長く落ちる前下がりの裾など、古いテーラードジャケットを思わせるデザインです。

アンコン仕立てによって堅苦しさを抑え、そこへ生地のしなやかな落ち感が加わることで、ジャケットでありながらかっちりと見えすぎず、カーディガンのような感覚で気軽に袖を通せるのも魅力です。
続いてパンツ。
・Wide and Tapered Silent Trousers “PACE”-SW(CACAO NIB)



フロントにインタックを入れ、腰周りから腿にかけてゆとりを持たせ、そこから裾へ向かって緩やかに絞りを利かせたワイドテーパードシルエットです。


ヒップポケットの上に施されたハンドステッチ以外の装飾を抑えた、シンプルなデザイン。タックによる腰周りの立体感や、ストンと落ちるボリュームのあるシルエットが印象に残ります。
動きの中で生まれるドレープも美しく、生地の表情や質感を存分に味わえるパンツです。
それぞれ単体でも魅力的な作品ですが、おすすめなのはやはりセットアップでの着用です。



テーラードジャケットとトラウザーズという組み合わせからは、綺麗でドレッシーなセットアップを想像すると思いまうかもしれません。
しかし、実際に上下で合わせてみると、風合い豊かな生地やゆとりのあるシルエットのおかげで、きちんと感はありつつもリラックスした雰囲気でご着用いただけます。
ジャケットだけでなく、シャツ、コート、パンツの3ピースでの着用も迫力のあるスタイリングになると思います。
シャツ、コートについては後日Blogにてご紹介いたしますのでお楽しみに。
長らくお待たせしておりましたが、ようやくオンラインストアにてKLASICAの新作を公開いたしましたのでこちらからご覧くださいませ。
執筆者 中村鴻大

