歪さに惹かれて
プレーントゥ、外羽根といったダービーシューズらしいデザインでありながら、左右で不均一なシルエット、無骨でいかにもアルチザンらしい佇まい。
いわゆる王道の革靴とは少し異なる印象に惹かれてオーダーした作品が届きました。
カジュアルで履く革靴をお探しの方にはもちろんですが、かしこまった雰囲気の革靴は既にお持ちの方にも手に取っていただきたい作品です。
・Stone Derby-Garment Dye Zeolite Cowhide(BLACK)

厚みを抑えた平たいスクエアトゥが特徴の「02last」を採用したこちらの作品では、火山活動によって堆積した火山灰や凝灰岩が長い年月をかけて結晶化して生まれた「ゼオライト」という天然鉱物を鞣し剤として用いたゼオライト鞣しが施されたカウハイドレザーを使用しています。

環境への負荷を抑えた鞣し手法の一つであり、自然由来の素材のみを用いることで、最終的に自然へと還っていくことも見据えられた革です。
鉱物を使用した鞣しですが、ベジタブルタンニン鞣しやクロム鞣しと比較しても遜色のない柔らかさやしなやかさがあり、しっとりとした質感に仕上がるのが特徴です。
鈍い光沢を帯びた表面は落ち着きのある表情で、指で押すとゆっくりと沈み込むような、もっちりとした感触があります。
革としては柔らかいのに頼りなさはなく、しっかりと芯を残している。このバランスが非常に良いと感じます。

製品染めを施すことで、革の表情には自然な濃淡やムラが生まれています。
均一に整えられた革とは異なり、光の当たり方や履きジワによって見え方が変わるのも魅力の一つです。
ただ綺麗なだけではなく、少しラフで、どこか抜けのある表情。
履き込んでいくことでさらに良くなりそうだな、と思わせてくれる革です。
そして、この革に合わせるようにコバやヒールはあえて荒さを残した仕上げに。
整いすぎない革の表情と自然に繋がり、全体に一体感を生んでいます。


さらには、革靴の加工としては非常に珍しい製品洗いをかけることでアッパーやソールを歪ませ、左右不均一で独特なフォルムに。


革、コバ、そして全体の歪み。
それぞれの要素が揃うことで、整いすぎない独特の存在感を持った仕上がりとなっています。
また、左右の足に合わせた非対称なヒールカップやアウトソールのウッドペイスが当然のように施されている作り込みの高さはこちらの作品でも健在。
ヒールにはアッパーを手吊り込みした証であるタックホールが見られ、細部にまで手仕事の痕跡が残されています。




履き込むことでシワが刻まれ、鈍い光沢に少しずつ変化が現れていきます。
この先どう育っていくのか、個人的にも非常に楽しみな作品です。
こちらの作品は製品染め、洗いを施しているため、ハーフサイズの無い40 41 42の展開です。
今ならサイズも揃っておりますので、履き比べていただくことも可能です。
皆様のご来店を心よりお待ちしております。
執筆者 中村鴻大


