永く着るための三重織
表から見える生地と肌に触れる内側の生地、その間にもう一枚を重ねた、全部で三層からなる「三重織」。
見た目には一枚の生地ですが、この一見しただけでは分からない構造には、暖かさを生み出すための工夫と、長く着続けることまで考えた仕掛けが込められています。
今季Solitaryでは、この三重織生地を使用したシャツとコートの2型をご用意いたしました。

経糸にオーガニックコットン糸、緯糸にはノンミュールジングウール糸を打ち込んだ三層の生地は、水に溶ける接結糸によって一つに繋げた状態で織り上げられています。
そのため、縫製時には一枚の生地として扱うことができ、そのまま裁断し、縫製します。
服として完成した後に水を通して接結糸を溶かすことで、縫い目では繋がりながらそれぞれの層が離れた特殊な構造に仕上がります。

三層の間にはわずかな空間が生まれ、そこに空気を含むことで保温性を高めているのも特徴です。
三枚の生地が重なっていると聞くと、ゴワつきがあったり、厚く重たいものを想像してしまうかもしれません。
しかし、袖を通してみると感じられるのは、ウールの細やかな毛羽によるふっくらとした柔らかさや、身体に沿ってしなやかに落ちる滑らかさ。それぞれの生地は薄く軽量なため重厚さはありません。
この三重構造は、長く着続けた衣服を修繕する際に用いる「当て布」から着想されたもので、見えているのは一番外側と内側の生地のみ。着用を重ねることで、どちらかの生地が擦り切れた時には、それまで内側に隠れていた生地が姿を現します。
傷んでから新しい布を当てるのではなく、いつか擦り切れることまで想定して、あらかじめ生地の中へもう一枚を忍ばせておく。衣服が傷んでいくことも長く着続ける時間の一部として考え、その先の修繕まで生地の構造そのものに組み込んでいるのが、この三重織の面白さです。
まずは、この生地をシャツとして仕立てたNMウールOC三重織シャツからご紹介いたします。

小ぶりな襟に、ポケットなどの装飾を抑えたシンプルなデザイン。身幅と肩幅には程よくゆとりを持たせ、裾はボックスにした適度にゆとりのあるシルエットです。
見た目はベーシックですが、肩や背中には細かな工夫が加えられています。
袖山の生地をいせ込みながら縫製し、袖底を高めに設定することで腕周りの運動量を確保。背中のヨークにもタックやギャザーを入れず、生地を細かくいせ込むことで余分なボリュームを加えることなく動きやすさを持たせています。




一枚のシャツとして着ることはもちろん、生地そのものに暖かさと膨らみがあるため、前を開ければ軽いシャツジャケットのような感覚でも着用していただけます。



そして、同じ生地をより味わえるのがNMウールOC三重織コート。

こちらは直線的なパターンを用いた着物のような平面的な構造が特徴です。肩には緩やかな傾斜をつけ、肩幅から身幅、袖までたっぷりと余裕を持たせています。

身体との間に大きな空間が生まれるゆったりとしたシルエット。生地の柔らかさによって肩から裾にかけて流れるように落ちてゆき、美しいドレープを描きます。




袖にも十分なゆとりがあり、厚手のニットやジャケットの上から重ねやすいサイズバランス。生地が持つ保温性も相まって、春や秋には軽い羽織として、冬にはアウターとして活躍してくれます。
そして、もうひとつの特徴が身頃を横切る切り替えの縫い目に沿うように設けられたポケットです。
十分な収納力を持ちながらも、袋部分が表へ現れないため見た目はすっきり。余計なディテールを前に出さないことで、生地とたっぷりとしたシルエットの印象がより引き立てられています。

同じ三重織生地でも、シャツでは日常的に着やすい軽快さがあり、コートでは生地の膨らみや柔らかな動きをより大きなスケールで感じられます。
形が変わることで見え方も着た時の印象も大きく変わる二つの作品。是非それぞれ袖を通して、三層が重なることで生まれる独特な生地の表情や柔らかな着心地を感じてみてください。
※MITTANの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


