ようやく始まったH Chukker
暑さがピークを迎えると、ファッションを楽しみたい気持ちとは裏腹に、スタイリングはどうしてもシンプルで固定化されてしまいがち。正直、重ね着どころかシャツ1枚羽織るのが限界……なんて日も少なくありません。
そんな夏の装いの中でも、季節を気にせずガラッと気分を変えられるのが足元です。
店内には各ブランドから少しずつ秋物も届き始め、そろそろ自分自身も何か新しいものを身につけたい。
そんな想いから気分を一歩先へと進めるべく、前々から狙っていた1足をついに履き下ろしました。

そもそも自分が欲しくてオーダーしていた作品なので、一部からは「えっ、まだ買ってなかったの?」「やっと買ったの?」なんて声が聞こえてきそうですが…(笑)、ようやく自分の足元へ迎え入れることができました。
PETROSOLAUMには魅力的なモデルがいくつもありますが、その中でもH Chukkerは個人的に一番好きな形です。
ぽってりと丸みを帯びたトゥ。短靴よりも高く、ブーツと呼ぶには低い、くるぶしを覆う程度の絶妙なカット。


そしてH Chukker最大のアイコンとも言えるのが、このシュータンの構造です。

アッパーと一枚で繋がったタンが蛇腹状に折りたたまれており、紐をキュッと絞ることで中央にふっくらとした立体的なシワが立ち上がります。
この山の稜線を描いたような独自のディテールが、H Chukkerに唯一無二の表情を与えています。

これまでPETROSOLAUMについて書く際にも度々触れてきた「03 last」。
その造形美と仕立ての良さは、眺めているだけでも伝わるものがありますが、実際に履いて歩くたびに感心させられます。
上から見下ろしたときの美しいトゥのラインや、足裏のアーチに沿うような立体的なシェイプ。
足を包み込むというより、文字通り「足に吸い付く」ようなフィッティングは、足を通すことでその真価を何倍にも実感することになります。


これまでもハンドソーンで仕立てられた革靴を履いてきましたが、H Chukkerに足を通して改めて感じたのは、新品とは思えないほどの履き心地の良さでした。
歩き始めからソールの返りが良く、履きはじめに感じる硬さや足への負担がほとんどありません。
さらに、その履き心地を支えているのがアッパーに使われたクードゥーレザーです。
厳しい自然を生き抜いたクードゥーならではの生々しい傷跡やシワ、独特のシボ。これだけ荒々しい表情を持ちながら、革そのものはもっちりと柔らかく、足の動きに合わせてしなやかに屈曲します。


見た目から想像する無骨さとは裏腹に足当たりは柔らかく、革を柔らかくするためのプレメンテナンスや、少しずつ履いて慣らしていくような準備も必要ありませんでした。
朝から一日履いていましたが、新品の革靴につきものの「今日はもう脱ぎたい」という瞬間が一度もない。
むしろ、これまで履いていた足に合っていない靴よりも圧倒的に歩きやすく、初日からここまで快適なのかと驚かされました。
履き心地だけではなく、脱ぎ履きが楽なのも気に入っています。シュータンとシャフトが繋がった構造によって履き口が大きく開き、アイレットも3つだけ。足を入れて、紐を締める。それだけです。


どんなに一目惚れするほど格好良いデザインでも、脱ぎ履きが面倒だったり、足が痛くなったりと、履くまでのハードルが高い靴は、結局のところ靴箱の奥に眠りがちになってしまいます。
だからといって、「楽だから」という理由だけで適当な靴で済ませてしまうのも、どこか寂しい。
せっかく洋服や全体の装いを整えたのなら、やっぱり足元までちゃんとイケてる靴を履いていたいものです。
実際に一日履いてみると、デザイン性だけでなく、足を守る道具としての履き心地の良さや脱ぎ履きのしやすさまで含めて、改めてH Chukkerの魅力を実感しました。
これだけ格好良くて、これだけ気軽に履けるなら、出番が増えない理由がありません。

そして、一日履き終え改めて靴を眺めてみると、朝とはもう少し違った顔になっていました。もともと刻まれていたクードゥー特有の傷やシワ、独特のシボに、自分の足の動きによる履きジワが重なり、トゥには早速小さな擦れも入りました。
・新品

・1日着用


たった一日でも靴の雰囲気がグッと変わったのを見ると、この先どう育っていくのかがますます楽しみになりました。
仕立てやアッパーに使われている革そのものの魅力はもちろんですが、履くことで新たな表情が加わり、その靴にしかない雰囲気へ変わっていくところも革靴の面白さです。
革靴らしいコツコツとした歩行音も楽しみたかったので、裏張りはせずレザーソールのまま履き始めました。
アッパーのお手入れも神経質になりすぎず、しばらく履き込んで乾燥が気になってきたタイミングで軽く保湿クリームを入れる程度に留め、傷や擦れも味として愛でていこうと思います。
クードゥーという革のポテンシャルを考えれば、そのくらいラフでタフな付き合い方の方が絶対に格好良くなるはずです。
これからガッツリと自分の足に馴染ませ、育てていきますので、また折を見てBlogで経年変化の様子をご報告させていただきますね。
※PETROSOLAUMの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


