柄の上に柄を
最初に目に飛び込んでくるのは、ブルーとホワイトのストライプの上に広がる大きなダイヤパターン。
もともと柄のある生地に、さらに別の柄を重ねる。なかなか大胆なデザインですが、その生地やシャツの仕立てへ目を落としていくと、見た目のインパクトだけでは終わらない魅力が見えてきます。

こちらの作品に使用されているのは、英国の老舗高級シャツ生地メーカーTHOMAS MASONのロンドンストライプ柄ブロード生地。
ブルーとホワイトのストライプが同じ幅で規則正しく並び、パリッとした適度なハリと、ブロード特有の美しい光沢を備えた上品な生地です。

ロンドンストライプという柄だけでもオーセンティックで完成されたシャツ生地ですが、今作では大胆にもその柄の上から大きなダイヤパターンのプリントを施しています。
濃色のプリント部分にも元々のストライプが透けるように残るため、二つの柄が互いを消すことなく重なり合い、単純なプリント生地とは異なる複雑な表情に仕上がっています。

上質な生地であればそのまま衣服として仕立ててしまうのが当たり前のような感覚ですが、そこに思い切った遊びを加えてしまう発想に、Sans limiteならではの面白さがあります。
シャツのモデルはSans limite定番のSH06B ボックススタンドカラー。
すっきりとした首元に対して、身幅にはゆとりを持たせたボックスシルエットで仕立てられており、クラシカルな雰囲気がありながらも堅苦しさを感じさせないデザインです。

袖には既製品のシャツにはあまり見られない2枚袖のパターンを用いており、縫製ピッチは全体を通して細かく、脇線には細幅の巻き伏せ本縫いが施され、シンプルなシャツの中に細やかな縫製とパターンワークが詰め込まれています。



前立てのプリントと胸ポケットは柄がずれないよう丁寧に柄合わせされており、プリントの大胆さとは対照的に、細かな部分も非常に丁寧で繊細です。

そして、袖口の開きはいってこい始末。

細かな運針や2枚袖、巻き伏せ本縫いといった緻密な作り込みに対し、袖口は簡潔な仕様で仕上げることで、ドレスシャツのようにかっちりとしすぎず、あくまでも気取らずカジュアルに着用できるバランスに仕上げています。
見た目のインパクトだけに頼らず、シャツそのものをきちんと作り込んでいるからこそ、この大胆な柄も品を失わずに成立しています。
上質な生地使い、細やかで丁寧な仕立て、そしてその上で思い切り遊ぶ。クラシカルな佇まいでありながらも、真面目なだけでは終わらない。その上質さと大胆さの振り幅がこの作品の魅力です。
※Sans limiteの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


