真っ赤なパンツ
展示会に並ぶ数多くの作品の中で、真っ先に目を奪われた鮮やかな赤。普段の自分であれば、まず選ぶことのない色。会場を後にしてからもずっと頭に残り続け、これは自分用に欲しいと思いながらオーダーした、今季YUTA MATSUOKAから展開されている作品の中でも、個人的に一番のお気入りパンツです。
・Randomly Felted Fabric Circle Pants(RED)

なぜ、普段なら選ばない真っ赤なパンツにこれほど惹かれたのか。
その理由のひとつが、こちらの生地でした。

密度を甘く設定して織り上げたウール生地。生地の一部分から経糸を抜いてランダムな縮絨加工を施すことでその部分がより強くフェルト化し、生地の中に縮み方の差が生じることで、特徴的なシワや歪みを生み出しています。


縮絨を施したウール生地といえば、繊維がぎゅっと詰まった硬くゴワゴワとした質感を思い浮かべますが、こちらは柔らかさと縮絨生地らしいがっしりとした質感が共存したふっくらとした風合いが特徴。
縮絨加工は、製品になったものに施されることが一般的。しかしこちらの生地は部分的に経糸を抜き、ランダムな縮絨加工を施しているため縮率が安定せず、製品の状態で加工すると作品として成立しないものが多く出てしまうため、生地の段階で縮絨を施し、仕上がった生地から洋服へと仕立てていく方法が選ばれています。
縮絨を終えた生地は激しく波打っているため、工場で何枚も重ねて裁断することができず、一着分ずつYUTA MATSUOKAのアトリエで手作業によって裁断されています。今回の生地は、数シーズンにわたって共に生地づくりに取り組んできた生地屋からの提案をもとに、何度も縮絨のテストを重ねながら完成へと辿り着いたとのこと。
荒々しく現れたシワや歪みだけでも十分な迫力がありますが、その背景には、生地屋とのやり取りや試行錯誤、そしてアトリエでの手仕事まで、多くの手間と時間を重ねて作り上げられています。
世界三大織物産地ともいわれる尾州にアトリエを構え、生地屋と近い距離でものづくりを続けるYUTA MATSUOKAならではの唯一無二の生地です。
そして、この生地を使って仕立てられているのがCircle Pants。
・169cm 77kg サイズ3着用



ヒップやワタリにはたっぷりとゆとりを持たせながら、膝下に切り替えを入れてぎゅっと絞り込んだ、ふっくらと丸みのあるシルエットが特徴です。
ボリュームをしっかりと持たせつつ、裾まわりはすっきりとしており、Circle Pantsならではの独特なフォルムを描きます。
大きく取られた生地の面には、縮絨によって生まれた激しいシワや不規則な歪みが存分に現れ、真っ赤な色と相まって、今季の中でも一際強い存在感を放ちます。

これだけ迫力のある見た目でありながら、穿き心地は非常に楽ちんで快適。
ウエストはゴムとドローストリングによるイージー仕様に加えて、裏側にはコットンリネンの生地を縫い合わせているため、肌に触れる部分はさらりとした質感。


ウール特有のチクチクとした刺激も気になりにくく、ウエストの楽な仕様と合わせて快適に着用していただけます。
激しく歪んだ生地、その生地を完成されるまでに重ねられた手仕事、Circle Pantsのボリュームのあるシルエット、そして赤一色のみの潔く強気の色展開。展示会で真っ先に目を奪われたのは、そのどれか一つでなく全てが揃ったからこそ惹きつけられたのだと思います。
生地の質感やシルエットの妙を是非店頭にてご体感くださいませ。
※YUTA MATSUOKAの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


