細部に宿る仕立て
南イタリアのカミチェリア(シャツ専門の仕立て屋)で経験を積んだデザイナー永田氏が手掛けるAquellos Ojos Verdes(アケヨスオホスヴェルデス)。
現地で培った技術を基に、歴史的な建築物や人物、写真など、様々なものからインスピレーションを受け、シャツを中心としたラインナップを展開するブランドです。
素材には、デザイナーが生まれ育った尾州産地で製作されたオリジナルファブリックを使用しています。
背景にある産地との繋がりも、このブランドを形作る要素の一つです。
イタリアの仕立てを踏襲しながらも、いわゆる色気や強さに寄せるのではなく、日常の中で自然に馴染む落ち着いたバランスに落とし込まれています。
こちらは、ブランドを代表するモデルの一つ、Windsor Wide Collar Shirt。


一見すると、とてもシンプルなシャツです。
胸ポケットなどの装飾はなく、佇まいはあくまで端正。
ただ、細部に目を向けるとその印象は大きく変わります。
大きく開いたウィンザーワイドカラーに、すっきりとしたフレンチフロント。
クラシックなドレスシャツのような印象です。

カフス、ヨークには細かなギャザーを施しており、柔らかな立体感のあるエレガントな雰囲気を生み出しています。

Solitaryでは、袖付けをデザイナー自身による手縫いでオーダーいたしました。

一般的なシャツのように身頃と袖を一度に縫い上げるのではなく、後付けで縫い目をずらし、前振り袖することで、人の自然な姿勢に沿った構造に仕上げております。

これにより肩から袖にかけての流れも非常に滑らかで、腕を通した瞬間に違和感がありません。
見た目では伝わりにくい部分ですが、着たときの動きやすさにしっかりと差が出る仕様です。
カフスはボタンを留めることで円錐状になり、手首でしっかりと収まるように作られています。
ゆとりのあるシルエットの中でも、全体を引き締めて見せる重要なディテールです。

また、ケンボロのスリット部分の閂止めやガゼットは手縫いで仕上げ、脇線は細幅の巻き伏せ本縫いで処理されています。
些細な部分にも丁寧な仕立てが施されています。


ボタンはすべて鳥足掛けで取り付けられ、根巻きまでしっかりと施されています。
日常的に着用を重ねることまで見据えた仕様です。

こちらのボタンは、貝ボタンの中でも最高級とされる、琵琶湖真珠貝を使用しています。
現在では生産ができず、デザイナーが所有残りわずかものを、このシャツにどうしても採用したかったとのこと。
独特な色ムラ、控えめで品の良い光沢がこのシャツに馴染んでいます。
立体的な仕立てによる身体に沿うようなフィット感があり、ストレスのない着心地。
それでいてタイトすぎることはなく、身幅、肩幅には適度にゆとりを持たせ、裾も程よい長さに。
タックインでもアウトでもバランス良く着用できるデザインです。

こちらのシャツでは、コットンとリネンで織り上げたツイル生地を使用しています。

手に触れるとヴィンテージチノのようなしっとりとした滑らかな質感。
リネン特有のわずかな節やムラが現れた、単調ではない奥行きのある表情を見せています。
シルケット加工と揉み洗いという工程を2回繰り返したことで、生地表面には細かな毛羽が立ち、独特なヌメりを生み出しています。
しなやかな中に程よいコシと肉感があり、季節を問わず着用できるのも魅力です。
仕立ての良さ、絶妙なシルエット。
袖を通した瞬間に、その違いを感じていただけると思います。
執筆者 中村鴻大


