裂いて、織って、また生地に
衣服を生産する過程で生まれ、本来であれば破棄されてしまう残布を細く裂き、それを糸のように扱いながら、もう一度一枚の布へと織り上げる裂織生地を使用したジャケット。
・IROIRO裂織ジャケット(白系/黒系)



この生地を織り上げているのは、インド北西部にある都市ジャイプールを拠点に活動する「iroiro zero waste」。
今作ではMITTANが別注した色合いで、一つひとつ手織りされています。


経糸には綿糸、緯糸には細く裂いた残布と綿糸を交互に打ち込むことで、表面には太く立体的な畝が連なっています。
均一な糸だけを使って織る生地とは異なり、もともとの布が持つ太さや色の違いがそのまま織りの中へ残っているのもこの裂織生地ならでは。
とりわけ白系はその様子が分かりやすく、生成りに近い柔らかな色の中を、ピンクや青、緑など異なる色が細く横切っています。


太さの揃わない畝や小さな節、僅かに歪んだ織り目。同じ方向へ糸が並びながらも決して均一ではなく、近くで眺めるほど手織りならではの不規則な揺らぎが見えてきます。
色も太さも揃っていない端材と、人の手による織り。その二つが重なることで、機械で均一に織り上げた生地とは異なる、素朴で味わい深い風合いに仕上がっています。

そして、この裂織生地の魅力は豊かな表情だけではありません。
太い畝が連なることでしっかりとした存在感がありますが、生地の密度自体は甘め。糸と糸の間を詰め切らず、ざっくりと織り上げられています。

光へかざしてみると、織り目の隙間から向こう側が透けて見えるほどです。
密度を詰め過ぎていないため、これだけしっかりとした見た目でありながら着心地は軽やか。さらに、織り目の隙間から風が抜けるため、気温が上がる時期にも熱がこもりにくく、春や秋の羽織ものとして非常に使いやすそうです。
サイズ3を着用してみました。(169cm 77kg)




肩や身幅にはしっかりとゆとりがあり、身体との間に空間を残したゆったりとしたシルエット。身幅のボリュームに対して着丈は長過ぎず、大きめのサイズを選んでも全体のバランスは取りやすく感じます。

袖丈は長めですが、個人的には2〜3回ほどざっくりと捲って着るくらいが好み。
太い畝が折り重なることで袖口にも立体的な表情が生まれ、きっちりと形を作るより、少し無造作に捲ったくらいがこの素朴な裂織にはよく似合います。


まだ暑さの残る秋口には袖を捲って軽く羽織り、気温が下がれば長袖のシャツやカットソーの上から。冬の寒さが緩み始める春先にも、ざっくりと風を通すこの生地が心地良く感じられそうです。
そして、これだけ手の込んだ生地を使いながら、価格は52,000円(税込57,200円)と手に取りやすい価格設定にも驚かされます。
破棄されるはずだった残布を新たな素材として生かし、一枚ずつ手で織ることで生まれる不均一な表情。そうした手仕事の背景を持ちながら、軽く風を通し、気負わずざっくりと羽織れるジャケット。
春と秋、それぞれの短い季節に袖を捲ったり、インナーを変えたりしながら、裂織ならではの素朴な風合いを楽しんでいただけたらと思います。
※MITTANの作品はこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


