選ぶということ
先日開催したPETROSOLAUM展示受注会では、時間をかけてじっくり悩まれている方が多かったように思います。
革や色を変えるだけでも印象は大きく変わり、同じモデルでも製法によって雰囲気や履き心地も変わります。
そうした細かな違いを実際に手に取りながら、色合いや質感、フォルムを隅々まで見て、また別のものと見比べる。
一度決まりかけても、「やっぱりもう少し考えたい」と戻っていく。
すぐには決まらない。でも、その時間がとても楽しそうでした。
今は、何かを選ぶ前にある程度答えに辿り着けてしまうことが増えました。
SNSを開けば、自分の好みに近いものが自然と表示されます。
インターネットを見ていても、一度気になったものに関連する情報や広告が次々と流れてくる。
便利になった反面、自分で選んでいるつもりでも、気づかないうちに選択肢そのものが用意されています。
気がつけば、自分の「好き」の外側がほとんど見えていない、ということもある。
だからこそ今回の展示受注会で印象的だったのは、簡単には決めきれない姿でした。
効率だけを考えれば、もっと早く決める方法はいくらでもあるでしょう。
それでも、実際にサンプルモデルや革を手に取り、悩み、話し、また悩む。
その繰り返しの中でしか見えてこないものが、たしかにあるように思いました。
頭で考えていたものと、実際に手に触れたときに感じるものが、ずれていることもある。
そのずれに気づけるのも、時間をかけて悩んだからだと思います。
すぐに答えが出ないからこそ、自分が何を求めているかが少しずつはっきりしてきます。
今回の展示受注会では、そんな時間が店内のあちこちで生まれていました。
Solitaryは、そういった時間を大切にできる場所でありたいと思っています。
悩む姿が楽しそうに見えたあの時間が、既にひとつの答えだったような気がしています。
執筆者 中村鴻大


