水墨画のような色彩
先日のBlogでもご紹介したMITTANの大麻ワイドパンツ。大麻100%ならではの優れた調湿性とぷるんとした弾力、使うほどに味わいが増す生地。そしてすとんと落ちるストレートシルエットが美しく、程よくボリュームを持たせた絶妙なサイズバランスが魅力のワイドパンツです。
今回は、お店に並ぶカラーの中でも独自の存在感を放つ松煙(しょうえん)をご紹介していきます。


松煙とは、文字通り「松の煙」のこと。樹齢を重ねた松や、油分を豊富に含んだ松の根を不完全燃焼させたときに立ち上る煤(すす)を、丹念に集めたものがこの色彩の正体です。
そして、その松の煤にベンガラを掛け合わせ、天然ゴムを定着剤として用いて染め上げられています。

煮出して染める一般的な草木染めとは異なり、松煙やベンガラによる染めは、細かな粒子を繊維の隙間に物理的に留まらせる手法です。
どちらも水には溶けない性質のため、大麻の繊維に定着させるための糊の役割が必要となります。そこでアクリルやウレタンのような化学的な定着剤に頼るのではなく、天然ゴムを使用します。
ウレタンやアクリルでは生地を固めてしまうのですが、天然ゴムは非常にしなやかで伸縮性に優れているため、生地に馴染み素材本来の風合いや柔らかさを損なうことなく、微粒子をしっかりと大麻の繊維に繋ぎ止めてくれます。
これらを職人の手作業によって何度も染め重ねることで色合いが深まり、いわゆる無機質なグレーとは明らかに異なる奥行きが生まれます。
松の煤とベンガラの粒子が混ざり合うことで、光の加減によってはライトグレーのように見えたり、落ち着いたチャコールグレーにも映ったりと、表情を変えていきます。
手染めならではの独特の揺らぎがこのカラーの大きな魅力です。
また、この染め手法は大麻という素材との相性が非常に良いのです。
麻素材特有の糸の太さのムラや節に重なるシボやシワ、織り目の隙間に、松煙とベンガラの粒子が乗ることで、生地の表面に水墨画のような掠れやにじみ、美しいグラデーションが浮かび上がります。

天然顔料と天然ゴムによる手染めだからこそ、着込み洗うほどに生地がくったりと柔らかくほぐれやすく、独特なムラのある色合いもジワジワと淡く優しいトーンへ移り変わってゆきます。
穿く人の身体の動きや日々の生活の癖が、味となって生地に刻まれていく。それは単なる色落ちではなく、自分だけの道具として育てていくような愉しみです。
大麻という天然素材に息づく松煙の豊かな色彩を、実際に見て触れながらじっくりと味わってみてください。
執筆者 中村鴻大


