邪魔なくらいが格好良い
接客をしていると、長いコートについて「裾が引っかかる」「車の乗り降りの時に邪魔になる」と言われることがあります。
確かにそうなんですよね。
自分で着ていても裾を踏みそうになることはあるし、車に乗る時なんかは短いアウターの方が圧倒的に楽です。
だけど、そんなことはどうでも良くなるくらい長いコートって格好いいと思うのです。
バサッと適当に羽織るだけでも雰囲気が出るし、長い裾が大きく靡く姿には浪漫がある。
そんな長ものへの浪漫を改めて感じさせてくれたコートがこちらKLASICAから届いております。
・Cut Off Classic Straight Coat "1983"-NN(MELANGE GRAY)

ベースとなったのはチェスターコートを思わせるクラシックな形。ノッチドラペルに胸元の両玉縁ポケット、腰にはフラップポケットとチェンジポケットも備えたオーセンティックなディテールを持ちながらも、袖口や裾は大胆に切りっぱなしにした荒々しいデザインが印象的です。



ほつれてきた糸はそのまま。
裾周りは特に荒々しい。
この粗野な感じもたまりません。

着丈はしっかりと長く、肩や身幅にもゆとりを持たせ、裾まで真っ直ぐ落ちるストレートシルエット。身体を包み込む生地そのものにも迫力があり、袖を通すだけで装いの主役になる存在感があります。

生地は少し粗く、着込んだようなヤレた風合い。
黒のメリのウール糸とグレーのリネン糸を用いた斜子織生地は、二色の糸が混ざり合った黒ともグレーとも言い切れない霜降り調の色合いが特徴。リネン特有の節やネップ、洗いをかけたことで細かなシワやシボが浮かび上がり、粗野な表情を見せています。
見た目のイメージに反して生地は適度な厚みです。秋口にはシャツ一枚の上から羽織り、もっと気温が下がればジャケットやニットをインナーに重ねる。春先でも袖を通せそうなバランスのいい生地です。


全体に広がるシワやネップ、糸の色の揺らぎ。着込んで、洗って、着シワが入ることでさらに表情豊かに変化してゆき、それをほとんど全身で味わえる。
長ものに惹かれるのは、裾が靡く格好良さだけでなく、生地や素材そのものを存分に愉しめめるところにもあるんだと思います。
生地が持つ素朴さに、切りっぱなしから垂れる糸の荒々しさ。全体には少しくたびれたような空気。クラシックな形をしていながら、漂うのは堅苦しさよりも無骨さや退廃的なムードです。


今の姿も十分に格好いいのですが、個人的にはもう少しヤレたところも見てみたい。
生地はくたびれ、裾から垂れる糸も増えて、最初より少し荒々しくなっている。
そのくらいまで着込んだこのコートを、何も考えずバサッと羽織る。
想像するだけでも格好いいんですよね。
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執筆者 中村鴻大


