現代に生み出されたケンプツイード
ここ数日続いていた拍子抜けするような暖かさが嘘のように、雪が降り始め、街の空気は一気に冬の色を帯びてきました。
吐く息が白くなり、足元には雪が残る。
ようやく、この季節らしい感覚が戻ってきたように思います。
こうなると、自然と目が向くのは暖かな生地や素材感のアウターやブルゾンではないでしょうか?
そこで今回は、以前KLASICAについてご紹介したブログにもチラッと登場していた、ケンプツイードを使った3型の作品について掘り下げてまいります。
まずはこちらの写真をご覧ください。

生地の表面には、ところどころに白っぽい繊維が顔を覗かせ、均一に整ったツイードとは少し違う野趣味のある表情を見せています。
こうした表情を生み出しているのがケンプ糸です。
ケンプ糸とは、羊毛が病気や老化により本来の性質を失った「死毛」と呼ばれる毛を用いた糸で、1本1本が粗く、染色性も低いため白っぽく見えるのが特徴です。
そのケンプ糸を織り交ぜたこちらの生地は、過去に織り上げられていた硬く重たいケンプツイードをベースとしつつも、糸の番手を下げ、着用しやすい軽さに現代の技術を用いて生まれ変わらせたもの。
ケンプ糸は繊維が中空構造になっており、軽量で保温性が高いという特性を持ち合わせている為、着用しやすい軽さになっても暖かさは担保しています。
また、オレンジやブラウンなど複数の色を織り交ぜることで、生地に奥行きを持たせながら、ホームスパンのような見た目にも暖かな色合いに仕上げています。

さらに、製品洗いを施すことによって着古したかのようなクタっとした表情に。
ツイード特有の重厚さの中に、野趣味や、ヴィンテージのような枯れた雰囲気を漂わせています。
実際に触れてみるとケンプ糸特有のカサッとした乾いたような質感なのですが、見た目から想像するほど硬さはなく、むしろ思った以上に柔らかな生地感が印象に残りました。
無骨さだけに寄りすぎないところが、この生地の魅力です。
まずは、この生地を用いたブルゾンから。
VOLUME SLEEVE TANKERS BLOUSON

こちらの作品はヴィンテージのアメリカ軍タンカースジャケットをベースにしたショートブルゾン。
丸みのあるたっぷりとした大きな袖、背面のドレープが一際目を惹く全体に丸みのあるシルエットが特徴です。
背面は一枚の大きなパターンで仕立てられており、裾にはゴムを配することで先述した柔らかな生地がツイードらしからぬ細かなギャザーを生み出しています。
ミリタリー由来の無骨なデザインなのに、どこか上品な雰囲気を帯びています。


単にヴィンテージを踏襲しただけではなく、生地使いやギャザー、袖の立体的なパターンなどの、ベースとなったものにはあり得ないディテールをミックスしたKLASICAらしいひねりと世界観を感じる作品です。
続いてはこちら。
CUT OFF CLASSIC STRAIGHT COAT

クラシックなチェスターコートをベースとしたロングコート。
全体的にゆとりがあり、裾に向かって綺麗に落ちていくストレートシルエットです。

コートということもあり生地量が多く重厚感のある見た目ながら、実際に袖を通すと先述の生地のおかげで軽やかな着心地。
丈が長い分、羽織って動いた時にはツイードとは思えないようなドレープが現れます。
裾や袖口は切りっぱなしにすることで、織り込まれた多色の糸が揺らいで現れ、粗野な雰囲気を醸し出しています。


クラシカルでフォーマルな印象のデザインに、ラフな表情を加えた印象的な仕上がりです
きちんとしすぎず、どこか力の抜けた佇まいが、このコートの魅力だと思います。
そして最後にこちら。
BIAS TUCK STRINGS TAPERED TROUSERS

バイアスタックによって腿周りに適度なゆとりを持たせ、裾に向かって緩やかにテーパードをかけたワイドテーパードパンツ。

今シーズンKLASICAが展開するパンツの中では比較的すっきりとした印象で、ケンプツイードの落ち感が分かりやすいデザインです。
ウエストはゴムで、ドローストリングが配されたイージーな着心地。
タックやスラッシュポケットといったスラックスらしいディテールを取り入れつつも、楽に着用できる気軽さがあります。
やや幅広く設定された裾のはそのまま履くと踵までストンとした落ち感が見られ、ボタンを留めることでクッションを生み出しシルエットに変化をつけることも可能です。

こうして改めて3型を並べて見ると、まず目に入るのはツイードらしい迫力のある佇まいです。
色の混ざり方や表面の表情だけでも、十分に存在感があります。

派手さはないものの確かなオーラを感じる作品です。
皆様にも是非おすすめを…と思っていたのですが、このブログを書き進めている途中にブルゾンとパンツはセットアップでお選びいただき旅立って行きました。笑
自分が着た姿ではなく、実際にお客様が着用した姿を見ると圧巻でした。
単体でも迫力はありますが、上下で合わせたときの存在感はやはり別格。
ジャケパンのセットアップではなく、ブルゾンとタックパンツというキメすぎないバランスが本当に格好良いなと思いました。
現在はコートのみのご紹介となりますが、店頭にてこの生地が持つ雰囲気を纏ってみてください。
執筆者 中村鴻大


