不均一な揺らぎがたまらなく美しい
このところ各ブランドからの入荷が続き、なかなかご紹介まで辿り着けずにいた灰草。
Classic Shirt、Coal Miner Shirt、Three Tuck Trousers、羽織コートと、これまでSolitaryでは継続して製作されているモデルを中心にご紹介してきましたが、今季はお取り扱いを始めてから初めてとなる新型が届きました。
・Railroad Jacket(柿渋×墨)



鉄道員が着用していた作業着をベースにデザインされた「Railroad Jacket」。
胸元には口を横向きにした懐中時計用のポケットとペンポケット、腰には大きなパッチポケット。さらに内側にもポケットを備えた、道具を持ち歩くための作業着らしいシンプルなつくりです。

サイズはフリー。肩幅、身幅ともに広く取られ、ゆったりとしたシルエットに仕上げられています。
灰草の作品には手染めや手縫いといった手仕事の印象強く感じられますが、デザイン自体には癖がなく、普段いわゆるアルチザン的な洋服をあまり着ない方にも取り入れていただきやすいモデルだと思います。
デザインとしてはシンプルなワークジャケットですが、細かな部分へ目を向け始めると灰草ならではの手仕事が宿っています。
まずは灰草を象徴する、デザイナー自身が一つ一つ手で削り出した真鍮のボタン。

シャツに使われているものよりも二回りほど大きくなったことで、不揃いな輪郭や削り跡までしっかりと見え、ジャケットの中でもかなり印象的なディテールになっています。
真鍮のボタンについ目が行ってしまいますが、その横にあるボタンホールも強く惹かれる部分。

前立ても袖口も、すべてが手縫い。
機械で均一に仕立てられたものではなく、一針ごとに糸の締まりや向きが異なり手縫いならではの揺らぎがあります。
きっちり揃っていないからこそ、つい一つ一つ見比べたくなる。この不完全さが本当に美しく、ずっと眺めていたくなります。
そして今回のrailroad jacketでは、綿と麻の混紡糸で織り上げたバッキンガム生地で仕立てていただきました。

糸を規則正しく交差させるのではなく、不規則に通しながら織り上げることで、表面には細かな凹凸がびっしりと現れています。
梨地のようなボコボコとした質感をもともと持つ生地ですが、ここからがさらに面白い。
デザイナー自身の手による染めと洗いにより生地がぎゅっと縮み、不規則だった組織の表面には細かな隆起と深いシワが幾重にも刻まれて、樹皮のような荒々しい表情に。
写真を撮っていても、つい生地ばかり寄って撮りたくなる。
それくらい、この凹凸と染めムラは見ていて飽きません。
程よい厚みとハリもあり、手に取ると見た目通りしっかりとした質感。着て、洗って、擦れていくことで柿渋や墨の色も少しずつ変わり、生地の表情がさらに豊かになりそうな生地です。
既にこれだけ荒々しい姿をしているだけに、この先がかなり楽しみです。
そして今季は、この生地をrailroad jacketだけでは終わらせず、Three Tuck Trousersも、同じバッキンガム生地、同じ柿渋×墨で染めてオーダーしています。
・Three Tuck Trousers(柿渋×墨)




ウエストから深く入ったタックによってたっぷりと分量を持たせたパンツに、この凹凸の強い生地。
ジャケットと並べた姿の圧倒的な迫力。

もちろんそれぞれ単体でも着ていただけますが、今回は是非ともセットアップで着ていただきたい。
これだけ癖のある生地を上下いっぱいに使えるのだから、わざわざ控えめにする必要もないと思っています。
ボタンはジャケットと同じサイズでボタンホールはパンツもすべて手縫いです。



そしてウエストのコード先端には、一つ一つ手で巻き付けられた真鍮。

綺麗な筒状に成形されたパーツではなく、潰れたり、少し曲がったり、巻き方もそれぞれ異なる歪みがあります。
こういうところが、たまりません。
真鍮の削り跡も、手縫いの針目も、柿渋と墨の染めムラも、生地に深く刻まれたシワも。綺麗に揃っていないものばかりなのに、それを眺めている時間がやたらと楽しい。
railroad jacketとThree Tuck Trousers。
細部まで、じっくりご覧ください。
なお、灰草の作品はブランドの意向により、ONLINE STOREでの掲載を控えさせていただいております。
作品の詳細につきましては、お電話またはメールにてお気軽にお問い合わせくださいませ。
※灰草の作品についてのBlogはこちらからご覧いただけます。
執筆者 中村鴻大


